このガイドでわかること
国内市場が縮小する中、「次の成長市場は中国」と考え越境ECを検討している日本企業は少なくありません。しかし実際に動き出そうとすると、参入方式の違い・複雑な税制・GFW(グレートファイアウォール)によるサーバー問題・中国SNSの特性など、日本のECとはまったく異なる論点が次々と浮かび上がってきます。
この記事は、中国越境ECを「一から理解したい」方に向けた入口ガイドです。
市場規模・参入方式・規制・物流・決済・集客の各テーマについて全体像と要点を解説し、深掘りが必要なテーマへの詳細記事へ案内します。
1. 中国越境EC とは何か
定義
越境EC(クロスボーダーEC)とは、国境を越えてインターネット通販で商品を販売・購入する取引形態を指す。中国向けに限定すると「日本の企業・個人が、中国の消費者に対してECサイトやプラットフォームを通じて商品を販売すること」と定義できます。
一般的な輸出貿易との最大の違いは、買い手が個人消費者であり、1件ごとの小口取引が積み重なる点だ。輸出として通関する「一般貿易」と異なる専用の税制・物流スキームが存在し、日本発の越境ECにはこのスキームの理解が不可欠になります。
通常輸出との違い(3点)
一般貿易(通常輸出)は企業が企業へ大量に商品を輸出し、中国側の流通を通じて消費者に届く。一方、越境ECは消費者が直接海外ECで購入し、国境を越えて自宅へ配送される。
この違いにより、
(1) 適用される税制(越境EC総合税・行郵税)
(2) 物流スキーム(直送モデル・保税区モデル)
(3) 輸入手続きの簡素化という三点において異なるルールが適用される。
この違いこそが、越境ECが日本企業にとって中国市場参入のハードルを下げる最大の要因でもあります。
2. 市場規模と成長性
世界の越境EC市場
経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」によると、
2024年時点の世界の越境EC市場規模は1.01兆USドルと推計されており、2034年には6.72兆USドルへ拡大すると予測されています。
2025年から2034年の年平均成長率は約23.1%と見込まれており、越境ECが今後10年にわたり持続的に成長する産業であることを示しています。
中国のEC市場規模
経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査報告書」によると、中国のEC市場規模は2024年時点で3兆672億USドルであり、前年比11.4%の増加と推計される。2028年には4兆167億USドルへの拡大が見込まれており、成長が継続する見通しです。
中国でオンラインショッピングを利用する人口は2024年時点で約9億2,261万人に達し、全人口の76.8%を占める。中国のEC化率は約50%と世界で最も高く、購買活動のオンラインシフトが進んでいます。
日本→中国への越境EC
日本国内の事業者が中国に向けて販売した越境ECの市場規模は、2024年に前年比8.5%増の2兆6,372億円に達しています。
中国が日本商品を越境ECで購入する金額は年間2.4兆円を超えており、日本が中国商品を購入する金額の55倍に上り、日本商品は中国市場において特異なほど高い需要を持っています。
インバウンドと越境ECの相互効果
重要な事実があります。
インバウンド旅行と越境ECは代替関係にあるのではなく、補完関係にあります。
日本を訪れた中国人の約35%が、自国に戻ってからも越境ECを通じてリピート購入を行います。さらに訪日経験者のSNSや口コミを通じて、商品の評判が中国国内で広まることも珍しくありません。
つまり、インバウンド施策と越境EC施策は連動させることで相乗効果を生む。実店舗での体験が中国SNSに投稿され、越境ECへの誘導につながる「旅アト消費」の流れを意識した戦略が今後さらに重要になります。
※市場規模の詳細な年次推移については、以下の記事を参照。
3. 参入方式の全体像
中国越境ECへの参入経路は大きく3つに分類され、
どれを選ぶかで初期コスト・リーチできる顧客数・運用体制が大きく異なります。
① 越境ECモール(天猫国際・JD Worldwideなど)
Tmall Global(天猫国際)やJD Worldwide(京東全球購)といった中国大手ECプラットフォームの越境EC専用ストアに出店する方式です。
中国に法人を設立せずとも日本法人として本格的に中国市場に参入でき、決済も日本の銀行を利用できます。
ただし出店基準は厳しく設定されており、天猫国際では保証金や手数料が必要となり、出店ハードルは他のECサイトと比べてやや高いです。
プラットフォームの既存ユーザーへのリーチが大きい反面、プラットフォーム手数料・広告費の負担と、アリババのルール変更リスクを常に抱えます。
2025年の中国ECシェアはアリババグループが32%でトップを維持しているものの、京東(17%)・拼多多(20%)・抖音(21%)が拮抗しており、上位4社で全体の90%を占める。アリババ一強時代は終焉しつつあり、複数プラットフォームへの分散展開が不可欠になっています。
※主要プラットフォームの個別比較は「【2025年】中国越境EC主要プラットフォーム10選」で詳しく解説しています。
② 自社越境ECサイト
Magentoなどのプラットフォームを使い、自社ドメインの越境EC専用サイトを中国向けに構築する方式。プラットフォーム手数料がかからず、顧客データを自社で保有できるため、長期的なブランド構築に向いています。
ただし、中国の「グレートファイアウォール(GFW)」により日本のサーバーにホストしたサイトは中国国内から低速・不安定になるため、中国向けサーバー(CDN最適化、または中国本土・香港ホスティング)の選定が重要なポイントになります。
※サーバー選定については「中国越境EC三大サーバー比較」を参照。
※自社ECの構築については「中国越境EC構築パッケージ」で対応内容と実績を紹介しています。
③ SNSコマース(WeChatミニプログラム・抖音EC)
WeChatのミニプログラム(小程序)や抖音のショップ機能を活用し、SNS内で購買を完結させる方式です。
別途ECサイトを構築せずとも、WeChat上にショップを持ちSNSと連動した集客・販売が可能。初期費用を抑えながらSNSの既存ユーザーベースを活用できます。
特にブランド知名度の高い商品や、インフルエンサー(KOL)との親和性が高いカテゴリで効果を発揮します。
越境ECモールの場合は、ユーザーが購入したい商品をキーワードで検索し、その検索結果の中から欲しい商品を選ぶという、従来型の購買行動が中心となります。
一方、SNSコマースでは、キーワード検索も一定規模で行われていますが、検索経由よりも、投稿コンテンツをきっかけに商品を認知し、興味を持ち、購入へつながるケースが多く見られます。
そのため、SNSコマースでは、単に商品を並べるだけではなく、コンテンツマーケティングの力でユーザーの興味を喚起し、購買意欲を高める運用方法が重要になります。
※WeChatミニプログラムの開発については「WeChatミニプログラム開発サービス」を参照。
※抖音の活用については「抖音マーケティング代行」を参照。