コロナ禍によって大きな打撃を受けた中国EC市場は、一時期その成長に陰りが見えるのではないかと懸念されていました。しかし、2025年現在、インバウンド市場の復活が追い風となり、中国人観光客が韓国に次いで多く来日している状況です。本記事では、今後の中国越境EC市場の行方について考察します。
なお、本記事は2024年9月経済産業省から発表された令和５年度電子商取引に関する市場調査報告書に基づく作成しております。

中国の越境EC市場規模、世界を圧倒

経済産業省の発表によると、2023年のBtoC-EC市場において、中国は世界市場の51.3%を占め、他国を圧倒する存在感を示しました。2位のアメリカ（19.5%）、3位のイギリス（3.6%）を大きく引き離し、世界市場の半分以上を中国が占めている状況です。さらに、中国とアメリカを合わせると、全体の70.9%という驚異的なシェアとなります。

中国国内のEC市場規模とその成長

2023年、中国のEC市場規模は2兆9,875億米ドルに達し、前年から11.4%増加しました。今後も成長が見込まれており、2027年には市場規模が3兆9,708億米ドルに達すると予測されています。この成長の背景には、オンライン購買者の急増があります。

オンライン購買者人口、圧倒的な中国

2023年時点で、中国でオンラインショッピングを行う人口は8億8,765万人。これは全人口の74.2%に相当し、日本（8,237万人）の約11倍です。さらに、2027年には9億5,165万人に増加し、全人口の78.1%に達すると予測されています。

中国のEC事業者、激化するシェア争い

中国市場は、アリババグループ（41.6%）、京東（17.8%）、拼多多（17.3%）、抖音（11.4%）の4大事業者で約88.1%のシェアを占めています。しかし、アリババグループのシェアが2017年の61.2%から減少する一方で、SNSやライブコマースを強みにした他社がシェアを拡大しています。2024年にはアリババが39.6%にシェアを落とし、抖音が14.7%まで成長すると予想されています。

越境ECと訪日外国人の深い関係

越境ECの成長は、訪日外国人旅行者数とも密接に関係しています。過去の調査によると、訪日経験のある中国人消費者の多くが「旅行中に購入した商品が気に入ったため、日本の商品を越境ECで購入した」と回答しています。また、訪日後に越境ECでリピート購入したいという意向を持つ中国人消費者は80%以上に達しています。

このように、訪日旅行がきっかけとなり、越境ECを通じた日本製品の購入が促進されています。日本の商品が「信頼できる」「品質が高い」と感じられることが、この流れを後押ししていると考えられます。

まとめ

中国の越境EC市場は、他国を圧倒する規模と成長率を誇り、訪日外国人旅行者数の増加が越境EC利用のさらなる拡大を支えています。
この市場動向を踏まえ、日本企業にとっても越境ECを活用した戦略が重要性を増しています。中国市場のポテンシャルを活かすためには、オンラインショッピング利用者のニーズを把握し、魅力的な商品やサービスを提供することが鍵となるでしょう。