中国越境ECや中国向けWebサイトの構築にあたって、クラウドサーバーの利用を検討されている方も多いかと思います。中国向けのサーバー選びは、性能や料金だけでなく「中国本土からまともにアクセスできるか」「ICP登記が必要か」という日本向けにはない条件が選定を左右します。
本記事では、AWS・Alibaba Cloud・Tencent Cloudの三大クラウドを2026年時点の情報で比較し、中国向けサイトのサーバーの選び方を解説します。
出典:AWS公式サイト
ECやPrime Videoなどでお馴染みのAmazonが提供するクラウドコンピューティングサービスがAWS(Amazon Web Services)です。2006年開始で同種のサービスでは老舗と言えます。
世界のクラウドインフラ市場でシェア約3割の首位を維持しており、日本国内でも採用例が最も多いため、マニュアル・書籍・技術者が豊富で初心者からプロの利用まで対応できます。EC2(仮想サーバー)・RDS(データベース)・S3(ストレージ)など多彩なサービスの組み合わせであらゆるニーズに対応できます。
ただし中国向けには大きな注意点があります。中国リージョン(北京・寧夏)の利用にはICP登記を持つ中国法人のアカウントが必要で、中国法人を持たない日本企業は事実上使えません。代替は香港リージョンですが、中国本土からのアクセスは金盾(グレート・ファイヤウォール)の影響を受けやすく、速度・安定性は中国国内リージョンに劣ります。実際に東京リージョンのAWSサーバーが中国からほぼアクセス不能だった実測例はAWSからアリババクラウドへ移行した実測記事で紹介しています。
出典:アリババジャパン
中国EC最大手のアリババグループが展開するクラウドがAlibaba Cloud(阿里雲)です。中国国内のクラウド市場では圧倒的なシェア首位で、世界でもAWS・Microsoft・Googleに次ぐ規模の大手IaaSプロバイダーです。日本向けには2016年にソフトバンクとの合弁で展開が始まり、現在はアリババクラウド直営体制で日本語サポートが提供されています。
最大の強みは、北京・杭州・上海など中国国内リージョンと、日本・東南アジアなど国外リージョンの両方を同一プラットフォームで選べることです。中国本土向けの配信品質を確保しながら、現地法人がない段階では東京リージョン等から始めるという段階的な構成が組めます。課金は従量課金(Pay-as-you-go)と割引の利いた前払い(Subscription)をインスタンス作成時に選択できます。
なお、中国国内リージョンでWebサイトを公開する場合はICP備案(要・中国法人)が必要ですが、東京リージョン等の国外リージョンなら不要です。「中国からのアクセスに強い国外サーバー」として使える点が、日本企業にとっての現実的な価値です。
出典:テンセントジャパン
WeChatや世界最大級のゲーム事業を手掛けるテンセントのクラウドがTencent Cloudです。中国国内ではAlibaba Cloudに次ぐ主要クラウドの一角で、日本でも法人向け展開が行われています。
もともとゲーム・動画事業で鍛えられたインフラのため、低遅延の配信・ライブストリーミングに強く、ライブコマースや動画を中心とした中国向けWebサービスとの相性が良いのが特徴です。WeChatミニプログラムのバックエンドとして使われるケースが多い点も、中国マーケティングの実務では見逃せません。一方で、Alibaba Cloudに比べると周辺サービスの品揃えや日本語情報は少なめなので、構成がシンプルな案件向きです。
| 項目 | AWS | Alibaba Cloud | Tencent Cloud |
|---|---|---|---|
| 世界での位置づけ | シェア約3割で首位 | 世界大手IaaS(中国国内首位) | 中国国内2番手グループ |
| 中国国内リージョン | △(ICP登記済み中国法人のみ) | ◎(北京・杭州・上海など) | ◎(複数都市) |
| 中国法人なしでの現実解 | 香港リージョン | 東京等の国外リージョン(中国アクセスに強い) | 国外リージョン |
| 強み | サービス数・情報量・技術者確保 | 中国配信品質・段階的な構成・日本語サポート | ライブ配信・低遅延・WeChat連携 |
| 向くケース | グローバル基盤を統一したい | 中国向けサイト・越境ECの本命 | ライブコマース・動画中心のサービス |
実際にAWS東京リージョンからAlibaba Cloudへ移行して、中国からのアクセスが「1分以上(表示されない)→2秒」まで改善した弊社の実測事例は実測事例の記事で公開しています。
越境ECの構築から運用までを一貫して進めたいなら、越境EC Web総合ソリューションもあわせてご覧ください。
目的によって異なります。中国国内リージョンを使いたい場合はAlibaba CloudかTencent Cloudが有力です。AWSは中国リージョン利用にICP登記を持つ中国法人が必要なため、中国に法人を持たない日本企業には、Alibaba Cloudの東京リージョンなど「中国アクセスに強い国外リージョン」が現実的な選択肢となります。
中国国内クラウドで圧倒的なシェア首位であり、北京・杭州など中国国内リージョンと東京など国外リージョンを同一基盤で選べる点が最大の利点です。現地法人がない段階では国外リージョンで始め、法人設立後に中国国内へ移す段階的な構成が組めます。課金もインスタンス作成時に従量・前払いを選択できる柔軟さがあります。
ゲーム・動画事業で鍛えられた低遅延インフラが強みで、ライブブロードキャスト・ライブコマースとの連携に優れています。ライブ動画を活用した販売施策や、WeChatミニプログラムのバックエンドを重視する場合に特に適しています。
使えますが制約があります。中国リージョン(北京・寧夏)の利用にはICP登記を持つ中国法人アカウントが必要です。中国法人を持たない場合は香港リージョンが代替策ですが、中国本土からのアクセス速度・安定性は中国国内リージョンや中国向けに最適化されたクラウドに劣る場合があります。東京リージョンのAWSが中国からほぼアクセス不能だった実測例もあります。
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