アジア最大人口の中国。そのEC業界は繁栄期を迎えつつあり、世界中に注目されています。
中国は世界においてトップの国として他国と争っており、勢いは様々な面で体現していますが、EC業界におけるマーケティング戦略や知識は米国と近い形になっています。
それは他国をリードできる手本になってきたのか。中国ECの真の姿は一体どういうものか。
本記事は第三者の研究データに基づいて米国と中国とのEC市場の状況を比較しております。
自社ショッピングサイトと大手モール出品・出店の2つの選択肢
冒頭は概念を説明していきます。
日本のEC業界に関して基本的に自社ECサイトの構築、そして楽天、Amazonなどのモールに出店、出品の2択です。(ASPは独自ドメインを模しているので自社ECサイトと定義)
これらは当たり前のように思うのですが、中国はここ最近1年から「私域电商」という概念が提唱され始めました。
「私域电商」とは、私有の領域でECを行うという意味になります、つまり自社サイトで商品を売ることです。
逆に「公域电商」は大手ショッピングモールサイトが持つ流入を使ってECを行うということになります。
なぜ2019年前後に自社サイトの重要性を意識され、一つの「理論」としてあげられたか、実は深い事情があります。
それは米国のEC状況と比較してはじめてわかりました。
[中国 vs 米国]小売Eコマース総売上高の比較
以下のグラフからデータを計算してみると、中国と米国は2019年度の小売り市場の総売上高は5.5万億ドル相当になっているとわかりました。
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2019年の中国のEC普及率は36.6%ですが、米国のEC普及率は10.7%にすぎません。
この一連のグラフで私に最も衝撃を与えたのは中国のEC普及率は2023年までに63.9%に達すると予想されているということです。
中国が人類の歴史に登場したことのないデジタル文明になりかることを示唆している数字といえるでしょう。
同時に、米国のEC普及率は2023年には16.2%に過ぎないと予想されています。
ただし、別の見方をすると、これは実際に米国のオフライン小売りが非常に強く、その反対に中国のほうはその土台が薄弱であることを意味しています。
しかし中国と米国のECの違いは明らかになり、EC普及率は否定できない以上、中国のECサイトの数は米国に上回るだろうと判断が下されるでしょう。
残念ながら、事実は真逆です!
[中国 vs 米国]ウェブサイト数の比較
これは1991年から2019年まで全世界のウェブサイト数推移データです。
現在、全世界には約17.2億のウェブサイトが存在し、その数は非常に膨大ですが、成長の勢いは緩やかです。
ウェブサイトのドメインのIPアドレスから判断すると、米国には1億近くのウェブサイトがあります。
現在、中国のウェブサイトはわずか500万未満ですが、500万近くのWechatミニプログラムもあることから、たとえ一切重複しないことにしても、合計約1,000万のウェブサイトを計上しても米国との差は10倍です。
世界のAlexaランキングの上位100万のウェブサイトの中で、中国のウェブサイトはわずか約5%、米国のは43%を占めています。
中国は世界の人口の5分の1を占めており、人口と比較した場合、割合があってないのですが更には人口が1億人未満のドイツより順位が下ということは事実です。
ここには2つの明らかな矛盾があります。
- なぜ米国のECは発展していないように見えますが、米国の企業ウェブサイトが非常に多いのか?
- 中国のECが非常に発展しているように見えるのに、中国の企業ウェブサイトが非常に少ないのはなぜか?
米国のEC事情
ECウェブサイトのシェア率
まず中国と米国のECサイトのシェア率を見ていきましょう。
これは2018年の中国と米国のEC市場のシェア率のデータです。
反映されている状況は依然として非常に明白です。
米国のトップ10位までのECサイトの市場シェアは70%を占め、10位以降のすべてのECサイトは30%を占めています。
中国のトップ2位のECサイトだけで74%を占め、トップ10位までのECサイトは86%を占め、10位以降のすべてのECサイトは14%を占めています。
このデータからは以下のように推測できます。
- 米国の企業の多くは自社ECサイトを構築し、大手ショッピングモールのシェアだけに頼ってません。
- 中国では人口数の恩恵、文化の統一、およびスマートフォンの普及により、大手ショッピングモールがEC市場を独占しています。 それと比較して、中国の中小企業は大手モールサイトのようにマーケティングオートメーションを統合する能力がなさ、または自社eコマースウェブサイトを作るキャパシティーの問題や品質などが原因として考えられ、市場シェアは比較的小さいです。
米国企業が自社ECサイトを構築して販売したいのはなぜですか?
自社ECサイトを運営するのに膨大な作業が付きまといます。
あくまで一例:
- 要件定義からシステム設計を考える
- デジタルマーケティングやプロモーションをかけてLPを作成して集客
- 独自のコンテンツを作成・配信して流入を確保
- ECサイトの運営とメンテナンスしてリピート
これらを踏まえると米国企業の人件費は非常に高いので、大手モールに出店や出品し商品を販売するのが本来効率的なのではないでしょうか?
その最大の理由はやはり利益です。
大手ECサイトの流通総額と売上
大手ECサイトに出店・出品して商品を販売するマーチャントは、実店舗の家賃を支払うように、出店料を支払う必要があります。
また発生した売上によって生成された流通総額(GMV)は、プラットフォームに一定の割合に応じた費用(マージン)を支払います。
マーチャントは商品を売るためにプラットフォーム内の広告手段を使うので、広告料の支払いも出てきます。
企業から支払う出店料、マージン手数料、広告料が大手ECサイトの売上になり、Monetization Rateと呼ばれています。
米国では、全体的な比較的高い方向で、それと比較した中国の大手ECサイトは格安に見えます。
米国大手ECサイトのMonetization Rate:
- Amazonの平均収益率:13〜15%
- Wish:15〜20%
- eBay:11〜12%
- ウォルマート:12〜15%
ただし、中国の大手ECサイトはアメリカに追随?して増加する傾向ではあります。
アリババを例に取ると、プラットフォームの全体的な収益化率は、2018年度の3.66%から2019年度の4.32%に増加し、2020年度の収益化率は公開データから5.2%に近づきました。 (アリババの2020会計年度のデータによると、490万ドルの収入に対して930億ドルの流通総額(GMV)から計算された収益化率は約5.2%です。)
実際、国内のマーチャントにとって、プラットフォームに支払うマージン手数料やマーケティング費用は賄えないことはありませんが、近年毎年20%ずつ増加していてやはり積み重ねることでいつかアメリカと似たような水準に達するのは時間の問題です。
中国大手ECの力は衰えているのでは?
過去20年の時を経て中国EC市場はタオバオでオンラインショップさえ開設すれば売れる時期から、大手ECプラットフォームの規則と仕組みを熟し、キャンペーン、広告、話題、SEO、さまざまな面で技術を駆使しなければ新規顧客をまったくとれない状況にあります。
その裏には、中国の膨大なインターネット人口に恵まれた恩恵は少しずつ失われていった要因の一つとして考えられます。
そのような背景で、中国の大手eコマースサイト自身も集客コストの上昇に対抗するために必然的に徐々にプラットフォーム手数料を引き上げ、そのコストは当然ながら出店・出品したマーチャントに負担してもらいます。
マーチャントの立場からすると
- 日々高騰していくコスト
- 獲得したのは注文にすぎず、顧客を獲得していない
自社サイトで顧客を囲い込んで販売やサービスを提供することが企業存続の要だと少しずつ意識しはじめたわけです。
文章冒頭で説明した「私域电商」につながりました。
多くの中国マーチャントはリスクヘッジという観点からECモールで売上を維持しながら、「私域电商」つまり自社ECサイトの構築を同時に行っています。
中国の「自社ECサイト」がこれから台頭する?
アメリカはCRMを基づいたメールマーケティングが今まで何十年やってきてその効果は十分に検証されました。
自社ECサイトを発展させるビジネス環境が整い、ShopifyやMagento、Squarespaceなど豊富なECサイト製作プラットフォームを利用することができます。
それと比べて中国のEC市場は大手eコマースサイトに何十年に独占された今、自社ECサイトから新たな可能性を求めているマーチャントがこれからどんどん増えていきます。
しかし、その自社ECサイトの展開における十何年の空白期をどう乗り越えるのか。太平洋向こう側に自社ECの集客、運営経験を何十年持つ米国から学ぶのが中国マーチャントのTO DOになります。
まとめ
中国の巨大ECの独占により、企業の利益を継続的に圧迫することで多くの企業がモール離れを起こしていくことになるでしょう。
その一方で、アリババやJDモールなど大手eコマース企業はそれを恐れながら、ライブコマースや大型バーゲンセールスを実施し、大手プラットフォームとして膨大な流入をもたらす事実を依然としてマーチャントに示しています。
それでも、ブランドやメーカー側にとっては顧客獲得コストが高騰している今、顧客を獲得する価値は短期的な利益よりもはるかにメリットが大きいと認識できるようになりつつあります。
いつかその独占された市場より打破して健全を戻し、米国のEC形勢に近づていくでしょう。
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