Magento(Adobe Commerce)とは?Adobe公式認定パートナーが実務目線で解説

Magento(マジェント)とは、世界で最も広く利用されているオープンソースECプラットフォームのひとつで、現在はAdobe社が開発を主導し、商用版は「Adobe Commerce」の名称で提供されています。

多言語・多通貨・複数ストアの一元管理を標準機能として備え、大規模EC、越境EC、BtoB(企業間取引)ECの構築に強みを持ちます。

2008年に公開され、2018年にAdobeが買収しました。ここではAdobe Commerce認定パートナーとして16年ECを開発してきた本メディアを運営しているマルウェブが、導入を検討する方が本当に知りたい「実務の現実」まで含めて解説します。

Magentoの全体像——Open SourceとAdobe Commerceの違い

Magentoには2つのエディションがあります。無償の「Magento Open Source」と、Adobeが商用提供する「Adobe Commerce」です。
基盤は同一で、違いは機能・サポート・費用に表れます。

項目 Magento Open Source Adobe Commerce
ライセンス費用 無料 有償(年間ライセンス・売上規模連動)※ヒアリングによってAdobe社によるお見積り
ホスティング 自社手配
(オンプレ/クラウド)
クラウド版あり・オンプレ可
主な追加機能 後述のエクステンションマーケットで拡張 エクステンションマーケットに+してB2B機能スイート、顧客セグメント、ステージング環境 等
サポート コミュニティがメイン Adobe公式サポート
向いている規模 零細企業〜(ただし要技術体制) 大規模・エンタープライズ

提供形態——セルフホストからSaaSまで

Magento/Adobe Commerceは、運用形態の選択肢が広いことも特徴です。大きく3つに分かれます。

形態 該当製品 インフラ・アップグレード カスタマイズ自由度
セルフホスト(オンプレミス/自社クラウド) Magento Open Source、Adobe Commerce(オンプレ版) 自社(または開発パートナー)が運用・更新 最大——コアのコード改変まで可能
PaaS Adobe Commerce on Cloud インフラはAdobe管理、バージョンアップは自社主導 高——コード改変・既存拡張が使える
SaaS Adobe Commerce as a Cloud Service(2025年夏 正式提供開始) Adobeが全管理・アップグレード作業が不要 限定——コア改変不可、カスタマイズはAPI経由(App Builder等)のみ

2025年夏に正式提供が始まったSaaS版(ACCS)の最大の利点は、Magento運用の長年の課題だったバージョンアップ作業のAdobe社任せです。一方で、コアのコード改変や従来のマーケットプレイス拡張は使えず、カスタマイズは新しいAPI方式に限られます。

選び方の軸は明確です。基幹システムとの深い連携や独自業務フローを求めるならセルフホスト〜PaaS、運用負荷の最小化を最優先するならSaaS
このページで述べている「システム資産としてのコントロール」は、前者のセルフホスト〜PaaSの特性であることにご注意ください。
なお、バージョンの現在地も押さえておきましょう。現行は2015年公開のMagento 2系で、いまも定期的なアップデートが続いています。初代のMagento 1は2020年6月にAdobeのサポートが終了しました(後述するOpenMageによる延命の道はあります)。

統計データで見るMagentoの現在位置

Magentoの市場ポジションは、この10年で大きく変化しました。Adobeの認定パートナーとしてまた開発に携わって16年になるので、良い数字も悪い数字も隠さずお見せします。

指標 数値 出典・時期
世界ECプラットフォームシェア 約8%
(世界3位/Shopify・WooCommerceに次ぐ)その昔は1位でした。。
複数調査 2024-2026※
稼働店舗数 約10〜13万サイトと言われています。
(ピーク時には約25万サイトといわれていました)
BuiltWith等 2024-2026
年間流通総額(GMV) 約1,730億ドル——店舗数減少後数値は維持しています。(要するに小規模開発の新規がShopifyで立ち上げたのでしょう) 業界調査 2026
米国トップ1000小売での採用 約20% 同上
大型B2Bコマース(GMV $50M超) シェア首位 Elogic 2026
地域分布 欧州(英・独・蘭)に密集/米国4位 6sense 2026

※調査により対象範囲・手法が異なるため幅があります。

Magento稼働店舗数の推移グラフ:ピーク期の約25万店から2026年には約9.9万店へ減少

数字が示す構図はシンプルです。
小規模ECの新規構築はShopifyに移行し、Magentoの店舗数は減少しました
一方で、多言語・基幹連携・BtoBといった複雑な要件を持つ中規模以上のECでは、流通総額ベースで今も主役であり続けています。

「数は減ったが、大型案件の世界では現役」——これがMagentoの現在地です。

検索人気の推移(Google Trends・過去10年)でもこの構図は確認できます。

Google Trendsによる過去5年間のMagentoの検索人気度の推移グラフ
Magentoの検索人気の推移(過去5年・全世界)(出典:Google Trends)
Google TrendsによるMagentoとShopifyの全世界での検索人気度比較グラフ
MagentoとShopifyの検索人気比較(全世界・過去10年)。2016〜2017年頃を境にShopifyが大きく上回る(出典:Google Trends)
MagentoとShopifyの国別検索関心を比較した世界地図
MagentoとShopifyの検索関心マップ(赤=Shopify優勢/青=Magento優勢)。世界的にShopifyが優勢(出典:Google Trends)
Google Trendsによる日本国内でのMagentoとShopifyの検索人気度比較グラフ
日本国内のMagentoとShopifyの検索人気比較(過去10年)。国内でもShopifyが主流(出典:Google Trends)

Magentoで何ができるか——選ばれる5つの理由

Magentoを中心に、基幹システム連携・多言語多通貨ストア・BtoB取引・決済配送・越境EC・マーケティングが繋がる全体像の図
  1. 多言語・多通貨・マルチストアが標準
    1つの管理画面から日本語・英語・中国語など複数ストアを運営できます。越境ECで「国ごとにカートを分けて作り直す」必要がありません。
  2. BtoB機能
    法人アカウント、取引先別価格、見積ワークフローなど、企業間取引(BtoB EC)の要件に対応します。
  3. オープンソースの拡張性
    ソースコードに手が入るため、基幹システム(OdooNetSuite等のERP)・在庫・物流(WMS)との深い連携や独自業務フローの実装が可能です。「パッケージの制約に業務を合わせる」のではなく、業務にECを合わせられます。
  4. 大規模カタログ・高トラフィック耐性
    数十万SKU規模の商品管理、セール時のアクセス集中に耐える設計が可能です。
  5. 資産としてのコントロール
    SaaSと異なり、データもコードも自社資産です。プラットフォーム側の仕様変更や料金改定に事業を左右されません。

MagentoとShopifyの違い——16年やってきた本音の使い分け

先に断っておくと、弊社はShopifyの構築・開発も手がけています。だからこそ、ポジショントークなしで言えます——この2つは競合ではなく、守備範囲が違うプラットフォームです

迷っているなら、まずShopifyを検討してください。
「月商がまだ小さい」、「標準機能で要件が満たせる」、「技術体制を用意できない」
この条件に当てはまるなら、Shopifyの方が速く、安く、確実に立ち上がります。
ここでMagentoを勧めることはないです。

ただし事業が次のような段階に入ると、芝生が青く見えてきます。

  • 「日本・英語圏・中国のストアを1つの管理画面で回したい」——越境ECで複数のカートを別々に運用する苦しみは、経験した人にしか分かりません
  • 基幹システムと在庫・受注をリアルタイムで繋ぎたい」——SaaSのAPI制約の壁に突き当たる瞬間です
  • 「法人ごとに価格・与信・承認フローを変えたい」——BtoBの要件は、標準パッケージの外側にあります
  • 「SaaSの従量コストが、事業規模に対して見合わなくなってきた」

この段階に来た企業の答えの1つがMagentoです。
実際、「Shopifyで立ち上げ、限界が来てMagentoへ移行する」という流れは定着しつつあります
逆もまた然りで、Magentoの運用体制を維持できなくなった企業がShopifyへ移るのも、正しい判断です。
私たちは両方を作ってきたからこそ、どちらの移行も支援できます。

何がいいたいかと言うと「どっちが良い」という話ではなく、「御社の事業は、いまどの段階にいるか」です。

導入の目安——費用・期間・保守

費用の話を曖昧にしても、お互いのためにならないので率直に書きます。標準的な構成での構築はなんだかんだで200万円〜、期間はおおむね3ヶ月~が目安です。基幹システム連携や多言語対応を含む中規模案件では850万円〜、6ヶ月以上を見込んでください。Adobe Commerce(有償版)やエンタープライズ規模は要件の幅が大きいため、個別のお見積もりになります。なお弊社ではBtoBに特化したパッケージングをDX BtoB Web受発注システム450万円~2.5ヶ月~で構築しています。

また見落とされがちなのが運用フェーズのコストです。
Magentoはセキュリティパッチとバージョンアップへの追従が前提のプラットフォームで、これを放置したサイトは脆弱性と技術的負債を抱えたまま運営していくことになってしまいます。
16年の運用支援で見てきた典型的な失敗はいくつかありますが、
初期構築だけ見積もって保守・アップグレード費用を計画していない
多言語対応を後回しにして、結局作り直しになる
この2つです。
導入判断の段階で、5年スパンの総コストで比較することをお勧めします。

Adobeとコミュニティ、Magentoを支えるエコシステム

Magentoは2008年に公開され、2018年にAdobeが約16.8億ドルで買収しました。現在の正式な製品情報はAdobe公式(Magento Open SourceAdobe Commerce)で確認できます。

このプラットフォームの特異な点は、コミュニティの厚みです。
象徴的な例が2つあります。

  • OpenMage——Adobeが2020年6月にMagento 1のサポートを終了した後も、コミュニティがフォーク(分岐版)としてセキュリティ修正と保守を継続しているプロジェクト。
    サポート終了から6年を経ても、世界中の店舗が安全に稼働し続けています。
  • Mage-OS——Magento 2のオープンソース版を、Adobeから独立した非営利団体が管理・配布するディストリビューション。
    コミュニティ主導の透明なガバナンスで、現在も活発に開発が続いています。

商用SaaSは、提供元がサービスを終了すればそこで終わりです。
Magentoはオープンソースであるがゆえに、開発元の方針とは独立して、コミュニティがプラットフォームを生かし続ける。前述の「システム資産としてのコントロール」とは、こういうことです。

もう1つの厚みがマーケットプレイス(拡張エコシステム)です。公式のAdobe Commerce Marketplaceには数千の拡張モジュール(エクステンション)が登録されており、決済・配送・マーケティング・基幹連携などの機能を後付けできます。

Shopifyのアプリストアとの本質的な違いは、拡張が「インストールして使う」だけでなくソースコードごと自社環境に取り込まれることです。
拡張そのものを自社要件に合わせて改修できます。
月額課金型のアプリと買い切り型の拡張というコスト構造の違いも、長期運用ではボディブローのように効いてきます。

マルウェブについて

Adobeロゴ:マルウェブはAdobe Commerce認定パートナー

株式会社マルウェブは2010年設立、Adobe Commerce認定パートナーAdobe公式ディレクトリ掲載)として、Magento/Adobe CommerceのEC構築・リニューアル・保守を16年にわたり支援してきました。日本・ベトナム・中国の3拠点体制で、越境EC・中国向けマーケティングまで一貫対応しています。

構築実例参照:株式会社タナベコンサルティング様株式会社ゼインアーツ様

よくある質問

Magento(マジェント)とは何ですか?

Adobe社が開発を主導するオープンソースのECプラットフォームです。無償のMagento Open Sourceと商用版のAdobe Commerceがあり、基盤は共通です。多言語・多通貨・複数ストアの一元管理を標準で備え、大規模EC・越境EC・BtoB ECといった「標準パッケージに収まらない要件」に強みがあります。世界シェアは約8%で3位、大型B2Bコマース(GMV5,000万ドル超)に限ればシェア首位です。

Magentoは無料で使えますか?

Magento Open Sourceはライセンス費用が無料です。ただし「無料で運用できる」わけではありません。サーバー費用と構築費用に加えて、見落とされがちなのがセキュリティパッチ・バージョンアップ対応の保守費用で、これは継続的に発生します。商用版のAdobe Commerceは売上規模に連動した年間ライセンス制(Adobe社への見積もりが必要)です。導入判断は初期費用ではなく、5年スパンの総コストで比較することをお勧めします。

MagentoとAdobe Commerceの違いは?

基盤は同一で、Adobe CommerceはB2B機能スイート・顧客セグメント・ステージング環境・Adobe公式サポートなどが付く商用版です。2018年にAdobeがMagentoを買収し、2021年に商用版の名称が「Magento Commerce」から「Adobe Commerce」に変更されました。さらに2025年夏からは、バージョンアップをAdobeが管理するSaaS型の「Adobe Commerce as a Cloud Service」も加わり、提供形態は3つに広がっています。

MagentoとShopifyはどちらが良いですか?

事業の段階によります。月商規模がまだ小さい、標準機能で要件が満たせる、技術体制を用意できない——この段階ならShopifyが速く、安く、確実です。一方、多言語・多通貨ストアの一元管理、基幹システムとのリアルタイム連携、法人ごとの価格・与信といった要件が出てきたら、Magento(マジェント)の領域です。実際「Shopifyで立ち上げ、事業が育って限界が来たらMagentoへ移行する」という流れは定着しつつあります。両方を構築してきた立場から言えば、「どちらが良いか」ではなく「御社の事業がいまどの段階か」で決まる問いです。

Magentoのデメリットは?

3つあります。第一に技術力。構築にも運用にも専門知識が必要で、国内ではMagentoエンジニアの確保自体が難しいのが実情です。第二にコスト。初期構築は標準構成でも200万円〜と、SaaSでの立ち上げより高くなります。第三にバージョンアップへの継続的な追従が必須なこと。これを放置するとセキュリティリスクと技術的負債を抱えます。この3つを許容できる事業規模・要件かどうかが、導入判断の分かれ目です。

Magento 1はまだ使えますか?

Adobeによる公式サポートは2020年6月に終了しています。ただしOpenMageというコミュニティ主導のフォークがセキュリティ修正を続けており、延命運用しているサイトは今も世界中に存在します。とはいえ決済要件(PCI DSS)や拡張モジュールの対応状況は年々厳しくなっており、新規構築はもちろん、既存のMagento 1サイトも中期的にはMagento 2系(Adobe Commerce)への移行を計画すべき段階です。移行のご相談は実績のある開発会社へ早めに。

SaaS版のAdobe Commerce(as a Cloud Service)とは?

2025年夏に正式提供が始まった新しい提供形態で、インフラ運用とバージョンアップをAdobeがすべて管理します。Magento運用の長年の課題だったアップグレード負荷から解放される一方、コアのコード改変はできず、カスタマイズはAPI(App Builder等)経由に限られます。深い基幹連携や独自業務フローが必要な場合は、従来どおりセルフホスト〜PaaS版が有力です。

まとめ

Magento(マジェント/Adobe Commerce)とは、多言語・多通貨・BtoB・基幹連携といった「標準パッケージに収まらない要件」を持つECのためのプラットフォームです。万能ではなく、規模と体制によってはShopify等の方が適します。自社の要件がどちらに向くか判断に迷う場合は、認定パートナーとして中立にアドバイスします。無料相談はこちらからお気軽にどうぞ。

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