中国市場へEC進出するなら、手っ取り早い方法として大抵の方が考えるのは中国大手通販モールへの出店でしょう。
モール出店は販売ルートとしては一番かもしれませんが、申請手続きにせよ、諸費用にせよ難易度が年々高っています。
日本から中国へ進出せず、EC出店だけを考えている方なら、現時点では天猫国際(Tmall global)と京東国際(JD worldwide)がメインの選択肢という人が多いですが、本当に選択肢はそれだけでしょうか?
今回はこの2社に出店する場合はどんな条件で、いくらかかるかまとめてご参考いただき、本当に中国越境ECに対してそれが一番よい手段なのかを考えて頂ければ幸いです。
中国モールへ出店できる大型通販サイト、天猫国際(Tmall global)と京東国際(JD worldwide)
アリババグループ傘下通販サイトである天猫(Tmall)と京東(JD.com)は中国で市場シェアの王座を争う2強です。
ご存知の通り、アリババは2002年からすでに中国の電子取引をリードしてきました。
電子取引に対してまったく概念がなかった中国人にいかに安心して購入してもらうかが課題でした。
ユーザーを守る方針を貫いたタオバオはいまだに多くのユーザーに愛用されています。
最初から自社販売をメインにしてきた京東(JD.com)ですが、長い時間を費やし自社物流系統を構築してきたことによって絶大な人気となった翌日配達サービスでユーザー数が増加、やがてアリババと肩並べるサイトに成長しました。
天猫国際(Tmall global)と京東国際(JD worldwide)は中国国内ユーザーにとって輸入品が購入できる国内向けECサイトからスピンオフした輸入品販売専用のECモールです。
天猫(Tmall)と京東(JD.com)に出店しなくても大丈夫?
単純に毎月のサイト訪問者数から見ると、まぎれもなくユーザー数が多い国内向けサイトに出品したほうが効率よいですね。
そもそも中国国内向けの天猫(Tmall)と京東(JD.com)は中国現地法人しか受け入れないので、天猫国際(Tmall global)と京東国際(JD worldwide)に出店しかできません。中国国内向けと比べるとトラフィックは天猫なら50倍、京東ならほぼ100倍の差があります。
言い換えると、売上50倍~100倍が違う差額がつくということになりえます。
そこはどうしても直視する必要があります。
天猫(Tmall)と京東(JD.com)ではユーザーの利便性を考慮して検索結果には、それぞれ天猫国際(Tmall global)と京東国際(JD worldwide)に出品されている商品も表示されるようになっています。
このように中国国内向けと国際ではそれぞれ完全に分けられている訳ではなく導線はありますが、それでもこの差があるということです。
どんな会社でも出店できる?
天猫(Tmall)と京東(JD.com)が受け入れる店舗にはさまざまな種類が存在しています。
自分の条件に合いそうな店舗を申請すれば問題ありません。
店舗種類によって後に紹介する保証金と年間費用などが若干変わる以外、ほとんど区別はありません。
天猫国際(Tmall global)と京東国際(JD worldwide)は基本的に以下四つの店舗種類を募集しています。
ブランド旗艦店
商標所有者または商標所有者によって独占販売権を獲得したものが経営できる店舗種類です。トレードマーク、商品商標マークのどちらでも構いません。
以下の場合は、ブランド旗艦店に当てはまります。
- 自社所有のブランドを経営する場合
- 複数のブランドを経営し、該当ブランドは同一人物・団体が所有されている場合
モール旗艦店
オフラインのスーパーマーケットチェーン、ストア、またはオンラインのB2C 通販サイトのブランド商標所有者は経営できる店舗種類です。
以下の場合は、モール旗艦店に当てはまります。
- ショッピングモールブランドの所有者が店舗を開設する場合(例:三越、イオンなど)
専売店
他ブランドから一般販売権を獲得したものが開設できる店舗種類です。
以下の場合は、専売店に当てはまります。
- 一つ授権されたブランドを経営する場合
- 複数授権されたブランドを経営する場合、ただし該当ブランドは同一人物・団体が所有されている
専営店
同じ商品カテゴリ内複数ブランド商品を販売する場合開設できる店舗種類です。
以下の場合は、専営店に当てはまります。
- 複数授権されたブランドを経営する場合
- 他社ブランド且つ自社ブランド両方を経営する場合
ブランド旗艦店とモール旗艦店は天猫国際(Tmall global)は自ら見込みのある企業を招待する制度をとっており、リスト以外の企業が申請するのは難航するのが事実です。
専売店や専営店を目指して申請したほうが効率がいいです。
初期費用および諸費用
天猫国際(Tmall global)
主に「保証金」、「年間技術サービス料金」、「テクニカルサービス料金のリアルタイム控除」の3つのカテゴリーが含まれます。
すべての情報を以下の公式サイトに記載されていますので、参考にしてください。
《天猫国際費用一覧(2020年)Tmall Global Fee Standards(2020)》
以下見方解説です。
1)保証金(Security Deposit )
保証金は経営する商品カテゴリによって金額が変わります。
15万人民元と30万人民元の2パターンに大まかに分けられ、カテゴリによっては最大80万人民元まで上ることもあります。
マーチャントが規則に違反した場合、天猫国際(Tmall global)および消費者に損害額が生じた場合の費用です。
撤退する際にユーザーとのすべての取引に不備がなければ、保証金は無事戻ってきますと公式発表がありましたが、実際変な名目をつけられて結局半分しかもらっていなかったとか、ずっと待たされて一切戻って来ないなどのネット上の書き込みはちらほら見かけられるが、信ぴょう性は謎です。
保証金一覧は上記リンクをクリックして、「List of security deposit for special categories is as follows」で検索して表グラフをご確認ください。
2)年間技術サービス料金(Annual Technical Service Fee)
経営する商品カテゴリによって3万人民元と6万人民元の2パターンがあります。
いわゆる年間費用です。
具体的な年会費基準については、以下を参考にしてください。
「《2020 Tmall Global Technical Service Fee Breakdown for Different Categories》」で検索して表グラフをご確認ください。
3)テクニカルサービス料金のリアルタイム控除(Real-Time Deduction of Technical Service Fee )
経営する商品カテゴリによって一般的に2%と5%がほとんどの場合です。
いわゆる商品販売手数料です。
天猫国際(Tmall global)で営業している販売者は、売上の一定の割合(「レート」と呼ばれる)に基づいて取引手数料を支払う必要があります。
商品ごとに違うので、「《2020 Tmall Global Technical Service Fee Breakdown for Different Categories》」で検索して表グラフをご確認ください。
京東国際(JD worldwide)
他のプラットフォームと比較して、京東国際(JD worldwide)の出店コストは比較的に安く、米ドルで計算されています。
保証金、プラットフォーム使用料(年間料金)、技術サービス料金(取引手数料)を含みます。
2019年に技術サービス料金の費用制度を見直され、「A+B」費用制度が導入されました。
すべての情報を以下の公式サイトに記載されていますので、参考にしてください。
2020年京东国际开放平台各类目资费一览表
プラットフォーム使用料の「A+B」体制とは
上記公式サイトに記載されている費用一覧の表グラフには「費率」の列があります。
「2%+1%」というふうに記載していますね。
2%はA、1%はBということで、一般的に商品取引手数料として認識するのはAです。
つまり商品が買われた場合は2%を手数料として払うという意味です。
Bはマーチャント四半期のリベートフレームワーク料金と京東に解釈されていて、あなたの店舗の四半期合計売上(GMV)によって発生した手数料になります。
簡単にシミュレーションすると、
四半期に100万円の売上があったとします。
Aの2%の販売手数料ということで、2万円の手数料が発生します。そしてBの部分で計算すれば、1万円になります。
ただたんにBの部分だけ四半期ごとに取られることではないかと思われるかもしれませんが、そういうわけではありません。
京東傘下の広告プラットフォームである「京准通」をマーチャントが利用する場合、利用した広告費との相殺が可能です。
つまり、四半期ごとに使う広告費は四半期売上(GMV)の1%に超過すれば、支払わずに済むことになります。
1%未満の場合は足りない分だけ請求される仕組みとなっています。
自社の広告プラットフォームを使って顧客還元と自社利益を備えた方針として見受けられますね。
リベートフレームワーク料金に含まれるカテゴリには、マタニティ、おもちゃ、楽器、美容とスキンケア、パーソナルケア、家庭用クリーニング/紙製品、家庭用電化製品、携帯電話、デジタル製品、コンピューターとオフィスグッズ、家庭用縫製品、キッチン用品が含まれます。
ますます難しくなるEC出店
中国法人を使わずに大手通販モールに出品する場合、これだけの出費がかかるのをご理解いただけたでしょうか?
手続きが複雑、費用が高い、それらはそれぞれの会社の状況と規模次第で見方が変わってきます。
また商品コストをどこまで下げられるかなどもキャパシティーなどによって大きく異なります。
今の流れを見ると、「全然余裕でいけるじゃん」と思われる方はいると思い、ただほとんど方は出店にかかったコストをいかに回収するかが急務と思う場合が多くいるはずです。
それに加えて、出店や運用代理も探してさらに出費がかかります。
社内でノウハウを構築せずお金だけで運用して結局回収できないのが最悪のパターンですね。
中国大手通販サイトの末路か
現在中国EC市場の成長スピードが落ち、オンラインショッピングユーザー数の成長も鈍化しはじめました。
なかなか増えない大手通販サイトへの流入、そして新参出店者がどんどん入る大手通販サイトでは、自然流入を期待せず、広告費を使わないと自社店舗への流入を手に入れない(売れない)自体になっております。
またソーシャルコマースの台頭によって内部だけでなく外部要因によるダメージが大いに食らっている大手通販サイトのマーチャントたちはさらに難しいでしょう。
【ソーシャルコマースとは?】「物」から「人」に移り変わりつつある中国EC[徹底解説]
弊社は2020年でも中国越境ECを検討している方からコンサルティングなどをお受けしております。きちんと御社のノウハウになる中国越境ECの実施方法をサポートさせて頂いていますので、是非お問い合わせ頂ければとおもいます。