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自社サイトがなくなる?中国ECのAPPに依存したマーケティングとは

前回の記事では中国と米国のEC市場の違いを紹介してみました。
中国はタオバオやJDモールをはじめとした大手ECプラットフォームに独占されたことによって、中小企業にとっては商品を販売するにはモール出店・出品しかほぼ選択肢がなく日々収益が縮小されているといった局面を迎えつつあります。
その局面を迎えたことで、中国では自社ECサイトを立ち上げ、自社だけの流入を確保することが運営側の課題として認識しはじめました。

中国の多くの事業者はその問題を解決するため、外国の先進的なビジネス成長モデルを引用し、APPに依存するといった中国独特のやり方でマーケティングし始めています。

本記事は何故そうなったのか、およびその独特なやり方を紹介します。

前回の記事をご覧になってから見ていただいた方がより理解できる内容となっていますので、見てない方は下記の記事よりお読みください。
[中国vs米国]中国EC市場のリアルの状況と米国EC市場徹底比較

欧米の自社ECサイトはなぜ成功しているのか

前回の記事を見てくれたらわかると思いますが、欧米の事業者にとってオンラインショッピングモールへの出店や出品より自社ECサイトで集客したほうが、初期、ランニングコスト、販売件数に合わせたマージン手数料などの支払いがなく、利益率を最大化できる考えです。

ほとんどの中小企業は自社ECの構築やブランディング、流入を増やすのに全力で取り組んでいます。

何故中国では今さら自社ECサイトの重要性を意識し始めたのか、それは今までとは同じ環境に置かれてはいなかったことが要因として考えられます。

自社ECで行う場合 中国 欧米
収益率 大手モールに出品とほぼ同等 大手モールに出品と比べて高い
ノウハウ 事例が少ない 参考データが豊富
出店ツール ほぼなし ツールが豊富

 

欧米自社ECの収益率は高い

前回の記事でもご紹介しましたが、amazonやeBayなど大手ECモールは手数料レートとして少なくとも12%~20%支払わなければなりません。
それと比べると自社ECの構築して運営した場合にはそれよりは同じ売れ方をした場合、手数料分利益が大きいです。

では自社ECの場合の手数料はないのかとと言ったら、基本的に決済代行費用だけです。(厳密にはサーバー費用・ドメインなどもかかります)
米国の決済システムは、クレジットカードを基盤として成り立ち、いまでも主流です。

ユーザーはクレジットカードを介して商品代金を支払います。
販売者に商品金額の2~4%の請求が行われます。
2~4%も取られるんだと思われるかもしれないが、ショッピングモールの手数料である12%~20%を取られるよりは大分開きがあります。
しかも商品には仕入れ費用もあるので、薄利の商材の場合はより鮮明です。

海外で最も人気のあるEC構築ツールであるShopifyは、開発知識がゼロでも自社ECサイトを立ち上げることできるうたい文句です。
ECサイトの構築だけでなく独自の決済システムも提供し、手数料はおおよそ2.7%であり、欧米から世界各国に広がって日本でもユーザーは近年増えていきています。

世界中で約50万人のアクティブな事業者がShopifyを使用してECサイトを構築、商品を販売しています。
2019年には、合計で611億USDのGMV(流通総額)だったそうです。

興味深いのは、Shopifyと拼多多の収益化率が似ているだけでなく、企業としての評価額も同じであるということです。

現在の市場価値は約1,200億USDですが、ただ中国でのShopifyと似ているASPサービスであるYouzanWeimobの資産評価はわずか30億USDです。

2019GMV_ranking

ECサイトの運営に対する理論と基礎が充実してても中国には向いていない?

ユーザーの成長で最も頻繁に言われているモデルは、2007年にDave McClureによって提案されたAARRRモデルです。
中国のデジタルマーケティングコミュニティがこのモデルを導入するために「成長ハッカー」の概念によって依存したのはほんの数年前のことです。

欧米企業がデジタルマーケティングの観点から中国企業を平均的に5〜10年リードしてきたと言っても過言ではありません。
AARRRモデル

ただし、いくら優秀であろうモデルでも中国の特殊環境によってローカライズされていきます。

たとえば、ほとんどの中国企業は自社サイトを利用せず、HTML5の特性を生かしたLPを作成、またはWeChatのミニプログラム(上の写真のwebsite.comに該当)を利用し、さまざまなデジタルマーケティング活動を推進し始めたところです。

あるいは、ユーザー利用喚起のために利用するEmail&Alerts、つまりメルマガやメール通知などは代わりにWeChatをメインに使っているなど、さまざまな面でローカライズされています。

つまり中国でマーケティングするなら、日本で有効だった知識を一回忘れたほうが良いです。
中国ならではの手法を取り入れる必要があるからです。

世界の理論では通用しない中国独特の手法とは

複雑な理論を述べるのを避けて簡単に説明すると、それはBBATをはじめとした大手企業をいかに活用することです。

BBATはBaidu、Alibaba、TencentのBAT以外に、新しいルーキーでもあるByteDance(Tiktok運営会社)も加入してBBATと言われてはじめています。
BBAT、そしてBBATと関係するすべての関連会社を利用することです。

ウェブサイトの売上を増やす前提は流入です。

ただし、中国のトラフィックはほぼ大手企業によって支配されているため、多くのトラフィックを獲得したい場合は、トラフィックランキングの上位に占めた大手会社によって提供されるマーケティングプラットフォームのみを優先的に考慮する必要があります。

ペイド広告を使わずにBBATのマーケティングプラットフォームでトラフィックを獲得するには、ほとんどの中小規模のマーケティング担当者が必ず触れるスキルの1つになりつつあります。

BBATを使ったSEO

主にGoogleのSEOはWebサイトを構築し、高品質コンテンツを提供することでWebサイト全体の価値を上げ、検索エンジンの評価を向上させています。
またコンテンツマーケティングというユーザーに価値のある情報を企業がブログなど通じて配信することで更に高評価を目指して運営しています。

中国では、多くの流入を獲得した業界大手は企業や個人向けオウンドメディアサービスを開発しています。
オウンドメディアで企業や個人からの発信した内容は検索エンジンにインデックスされるだけでなく、業界大手のニュースサイトやアプリにも取り上げられる可能性がメリットがありますので、大手からの流入を獲得用できるチャンスがある以上、多くの中国の中小企業は自社ブログを立ち上げず、大手企業のオウンドメディアサービスからアカウントを開設して発信しています。

独自にブログを運営することでは得られない効果はありますが、残念ながら自社サイトにはまったくメリットがないのが事実です。

ほとんどのオウンドメディアサービスでは、外部リンクを配置できないことを明確に規定しています。
これにより、記事やネタはPR感を薄くするなるような記事の書き方にこだわり、潜在的な顧客を獲得していく手法が主流です。

主要オウンドメディア一覧:

Sohu:搜狐号
163.com:网易号
Baidu:百家号
今日头条:头条号
テンセント:企鹅号
アリババ:大鱼号

BBATを使ったメルマガ

ECサイトの運営はもちろん、それ以外のオンラインビジネスの場合はユーザーのタッチポイントとしてはメールアドレスはいまだ主流です。
メルマガ、サインアップ、セールスレターなどユーザーに情報を届ける手段としては、欧米ではメールアドレスが発明されてから、それが定番手段としてずっと変わっていませんでした。

米国のメールの開封率とクリック率を見てみましょう。アメリカメールオープン率

驚くことに米国のメールオープン率は約30%以上がありますね。
それと比較して中国は非公式データによると平均で0.2%です。

中国のインターネット市場において個人への普及は約20年前からでした。
2010頃からはモバイルインターネットの時代を迎え、飛躍的に発展を成し遂げ、2020年になってモバイルのユニークデバイス数は14億=中国の人口と同等になってきています。

その速さから生まれたのはスマートフォンの保有率とIM(インスタントメッセージ)系のAPPの普及率、そんな時代に中国の最大手のIMソフトウェア開発者であるテンセントによって2011年リリースされたWeChatは最終的に中国のIM市場を独占したAPPになりました。

2018年、世界中で毎日2,800億通のメールが送信されます
2018年、Wechatは毎日450億のメッセージを送信します

中国の人口は世界人口の5分の1を占めており、中国人はメールの代わりにWechatを利用していると考えられます。
欧米ではそもそも独占したIMソフトウェアは見当たりません。そこそこシェアを持っていてもアカウントを持ってないユーザーが多数いる状態です。
唯一お互いに連絡取れる手段は今だメールアドレスです。

ビジネスであろうが、個人間であろうが、人と人でのコミュニケーションを取れる手段としては、
メールアドレスが最も浸透されている欧米のように中国ではそれがWechatになっています。
なので、メルマガのようにWeChatで配信することでら同等の効果を得られると置き換えられます。

まとめ

WeChatの公式アカウントとミニプログラムのサポートにより、WeChatは企業運営においてますます重要なチャンネルになっています。

メールアドレスの代わりにユーザーとの接触において最も効率が高いWeChat。
十億人が使うアプリとしては検索流入より効果が高く、さらにモーメンツやシェア機能も充実されていることで、リファーラルの獲得や口コミ戦略も考えられるようになりました。

またミニプログラムではECサイトやビジネスサイトなども簡単に作成することが可能なサービスであるため、WeChat決済APIの導入も加わることでWeChatに依存した公式サイトをユーザーの受け皿にしてもまったく問題ない。
そういうふうにWeChatに関連するマーケティングは中国マーケティングの定番かつ中心になるでしょう。

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ABOUT ME
Jiang
中国上海出身で2018年に来日、現在福岡在住。 来日前8年間中国マーケティングの仕事に携わり、ウェブマーケティング専門でマーケターとして活躍しています。 中国集客・広告・EC出店をご提案しています。

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