越境ECサイトを構築したい、海外向けにECサイトを多言語化したい、海外モールへ出店したい。そう考えたときに、最初に気になるのが構築費用や広告費、翻訳費、運用開始までの初期費用です。
以前の記事では、2021年6月時点の情報として「小規模事業者持続化補助金」「事業再構築補助金」「IT導入補助金」などを中心に紹介していました。2026年現在、制度の内容は大きく変わっています。
2026年時点で重要なのは、「ECサイトを作るだけ」で使える補助金は少なくなっているという点です。特に国の補助金では、販路開拓・生産性向上・新事業進出・海外市場開拓など、事業計画全体との関連性が求められます。一方で、地方自治体の海外販路開拓支援では、越境ECサイト構築、海外ECモール出店、多言語化、海外向け広告などを明確に対象としている制度もあります。
まず結論:越境ECで狙いやすい補助金の考え方
越境ECに使える可能性がある制度は、大きく分けると次の4種類です。
1つ目は、小規模事業者向けの販路開拓補助金です。小規模事業者持続化補助金は、販路開拓の一環としてWebサイトやECサイト、SEO、商品写真などに使える可能性があります。ただし、2026年の公募要領では、ウェブサイト関連費だけで申請することはできず、補助金交付申請額の上限も30万円とされています。
2つ目は、ITツール導入系の補助金です。2026年時点では「デジタル化・AI導入補助金2026」として、中小企業・小規模事業者等のITツール導入を支援する制度があります。ただし、対象となるITツールは事務局に登録されたものが前提で、補助金申請者は登録されたIT導入支援事業者と組んで申請する必要があります。
3つ目は、新事業・新市場進出向けの大型補助金です。中小企業新事業進出補助金は、新規事業への挑戦を行う中小企業等が対象で、補助上限は従業員数に応じて2,500万円から7,000万円、賃上げ特例では最大9,000万円まで設定されています。ただし、補助下限が750万円のため、小規模なECサイト制作単体ではなく、海外向け新事業として投資規模が大きい場合に検討する制度です。
4つ目は、自治体の海外販路開拓・越境EC支援です。地方自治体の制度は、越境ECモール出店、自社越境ECサイト構築、海外向け広告、翻訳、海外向けコンテンツ制作などを直接対象にしているものが多く、越境ECサイト構築との相性が比較的高いといえます。
国の補助金・助成金
小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者等が作成した経営計画に基づき、販路開拓や業務効率化に取り組む費用の一部を補助する制度です。2026年の第20回公募では、通常の補助上限は50万円、補助率は原則2/3、インボイス特例や賃金引上げ特例の対象となる場合は上乗せがあります。
越境ECとの関係では、商品販売のための自社Webサイト作成・更新、効果や作業内容が明確なSEO対策、ECサイトに掲載する宣材写真の制作費用などが「ウェブサイト関連費」の対象例として挙げられています。一方で、ウェブサイト関連費のみでの申請は不可、上限は30万円、補助事業期間内に運用に至らなかったホームページやランディングページは対象外とされています。
そのため、越境ECサイト構築だけを目的にするよりも、海外向け商品の販路開拓、展示会出展、チラシ・カタログ制作、広告配信、商品改良などと組み合わせて、販路開拓計画全体として申請する方が現実的です。
デジタル化・AI導入補助金2026
デジタル化・AI導入補助金2026は、中小企業・小規模事業者等が自社の課題に合ったITツールを導入し、労働生産性を高めるための制度です。通常枠では、補助額は5万円以上150万円未満、または150万円以上450万円以下の区分があり、補助率は1/2以内または要件により2/3以内です。
越境ECで考える場合、単なるオリジナルECサイト制作よりも、販売管理、在庫管理、物流管理、決済、顧客管理、データ連携、業務自動化など、登録済みITツールを導入するケースに向いています。通常枠の対象には、ソフトウェア購入費、クラウド利用料、機能拡張、データ連携ツール、導入コンサルティング、導入設定、保守サポートなどが含まれます。
つまり、越境ECのフロントサイト制作というより、EC運営を支えるバックオフィスや業務システム導入に向いた補助金と考えるべきです。Shopify・EC外部システム連携のように、ECと基幹・在庫・物流をつなぐシステム導入と組み合わせて検討すると、制度の趣旨と噛み合いやすくなります。
中小企業新事業進出補助金
中小企業新事業進出補助金は、企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦を支援する制度です。補助上限は、従業員数20人以下で2,500万円、21~50人で4,000万円、51~100人で5,500万円、101人以上で7,000万円となっており、賃上げ特例の適用により上限が引き上げられる場合があります。補助率は原則1/2、地域別最低賃金引上げ特例では2/3です。
越境ECで使う場合は、既存事業の延長としてECサイトを作るだけではなく、新しい海外市場への本格進出、新商品・新サービスの海外販売、新たなD2C事業の立ち上げなど、「新事業進出」として説明できる事業計画が必要です。補助下限が750万円であるため、比較的大きな投資計画に向いています。
なお、本補助金は2026年6月19日締切の第4回公募が最終回として終了しており、2026年8月以降はものづくり補助金と統合した「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」としての公募が見込まれています。統合後はグローバル枠の上限が最大7,000万円(大幅賃上げ特例で最大9,000万円)へ引き上げられる見込みで、海外進出向けの投資計画にはむしろ追い風です。
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、革新的な新製品・新サービスの開発や、海外事業を通じた国内生産性向上を支援する制度です。グローバル枠では、海外展開を目指す中小企業・小規模事業者が対象となり、補助上限は最大3,000万円、補助率は中小企業1/2、小規模事業者2/3です。対象経費には、設備投資費、システム構築費、試作開発費、外注費などが含まれ、海外市場開拓に関する事業では海外旅費や通訳・翻訳費等も追加されます。
越境ECとの相性でいうと、単なるサイト制作ではなく、海外向けの新製品開発、受注・生産・物流を連動させるシステム構築、海外販売に必要な業務プロセスの整備などを含む場合に検討しやすい制度です。
こちらも第23次公募(2026年5月8日締切)をもって単独での公募は終了しており、前述の統合制度「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」に引き継がれる見込みです。最新の公募状況は公式サイトで確認してください。
地方自治体の補助金・助成金
国の補助金よりも、越境ECとの相性が高いケースが多いのが自治体の海外販路開拓支援です。ここでは、2026年7月2日時点で確認できた制度を地域バランスよく整理します。
| 地域 | 自治体・機関 | 制度名 | 越境ECで使える可能性がある内容 | 補助率・上限 | 状況 |
| 北海道 | 札幌市 | 食の海外展開チャレンジ支援補助金 | 食関連事業者向け。外国語版資料やホームページ制作にかかる翻訳費用等が対象 | 補助率1/2、上限10万円・20万円・50万円 | 申請期限は令和9年1月29日。予算終了の可能性あり |
| 東北 | 仙台市 | 海外販路開拓チャレンジ支援助成金 | 海外への電子商取引、自社販売サイトの構築・改修、海外向け広告、コンテンツ制作、多言語化費などが対象 | 条件により2/3または1/2。上限は最大100万円 | 令和8年度制度として掲載 |
| 関東 | 栃木県 | 海外販路開拓・拡大支援事業費補助金 | 海外見本市出展、海外電子商取引、海外向け商品開発・改良などが対象 | 補助率3/4以内、上限50万円 | 2026年5月29日で募集終了。次年度確認候補 |
| 関東 | 川崎市 | グローバル展開支援事業補助金 | 越境ECの出店費用、サイト構築費、コンテンツ制作費、マーケティング・広報費、運搬費、通訳翻訳費などが対象 | 補助率1/2以内、上限25万円、重点事業は30万円 | 2026年10月30日まで。予算額到達で終了 |
| 北陸・信越 | 新潟県・NICO | 海外展開助成金 | 越境ECサイトの新規構築、自社サイト構築、越境ECモール出店などが対象 | 補助率1/2以内。トライアル50万円、商流構築150万円、地域中核企業300万円 | 1次募集終了、トライアルサポートコースは7月下旬ごろ二次募集予定 |
| 北陸 | 金沢市 | 海外販路開拓支援事業(海外ECサイト活用) | 既存の海外ECサイト出店、自社海外ECサイト構築、サイト構築費、広告宣伝費、販売促進費などが対象 | 補助率1/2、上限100万円 | 2026年6月30日で受付終了。次年度確認候補 |
| 東海 | 名古屋市 | 中小企業海外展開支援事業 | タイ・ベトナム・インドネシア・マレーシア向けの商談会、PR資料作成支援、商談準備・交渉支援 | 参加支援型。渡航費や制作費等は参加企業負担 | 2026年6月5日で募集終了。EC構築費補助ではなく海外商談支援 |
| 関西 | 兵庫県 | 海外展開支援助成金(越境EC) | 越境ECモール出店、越境ECサイト開設、サイト・コンテンツ制作費、広告費、外部コンサル費などが対象 | 越境ECは上限50万円 | 2026年5月15日で受付終了。次年度確認候補 |
| 中国 | 鳥取県・とっとり国際ビジネスセンター | 海外展開専門的サポート事業支援補助金 | 海外展開に必要なEC・越境EC活用等のIT支援業務、専門家・コンサル委託などが対象 | 補助率2/3以内、上限40万円 | 随時募集 |
| 九州 | 北九州市 | 中小企業海外展開支援助成金 | 自社越境ECサイト構築、大規模広報、海外市場での販売拡大、越境EC活用などが対象 | 海外展開戦略支援枠は1/2以内、上限100万円。基礎支援枠は1/2以内、上限10万円 | 令和8年度制度として掲載 |
| 沖縄 | 沖縄県 | 稼ぐ海外展開モデル支援事業補助金 | 海外市場で継続的に収益を生むビジネスモデル構築、県産品等の海外販路拡大を支援 | モデル構築補助金は補助率4/5以内、上限500万円。活動支援補助金は1/2以内、上限45万円 | モデル構築補助金は2026年7月17日正午まで受付 |
越境ECサイト構築で補助金を使うときの注意点
補助金は、採択されたらすぐに現金がもらえる制度ではありません。多くの場合、事業者が先に自己負担で支払い、事業完了後に実績報告を行い、審査を経て補助金が支払われます。小規模事業者持続化補助金でも、補助事業遂行には自己負担が必要で、事業完了後の精算払いとされています。
また、交付決定前に契約・発注・支払いをした費用は対象外になることが多いため、制作会社への正式発注のタイミングには注意が必要です。特にECサイト構築は、要件定義、見積取得、申請、採択、交付決定、制作開始という順番を守る必要があります。
さらに、自治体によっては相見積もりが必要です。たとえば仙台市の制度では、自社販売サイトの構築・改修費、海外向け広告・マーケティング費、コンテンツ制作・多言語化費などについて、原則2社以上から相見積もりを取り、仕様・作業範囲・成果物・納期・支払条件等を同一条件に揃えて比較可能な見積書を提出するよう求めています。
採択されやすい越境EC計画にするポイント
越境ECサイト構築で補助金を活用する場合、単に「海外向けECサイトを作りたい」という内容では弱くなります。次のような観点を入れることで、販路開拓や海外展開の計画として説得力が出ます。
まず、対象国・対象地域を明確にすることです。中国、台湾、香港、東南アジア、北米など、どの市場を狙うのかによって、必要な言語、決済、物流、広告媒体、SNS導線が変わります。
次に、販売する商品とターゲット顧客を具体化することです。既存商品をそのまま海外に出すのか、海外向けにパッケージや説明文を変えるのか、現地ニーズに合わせて商品構成を変えるのかを整理する必要があります。
また、ECサイトだけでなく、集客導線まで含めることが重要です。海外向けSEO、SNS広告、小紅書・WeChat・Instagramなどの投稿、海外インフルエンサー施策、海外モール出店など、サイト公開後にどのように売上を作るのかまで計画に入れるべきです。中国市場であれば、アプリ内で購買まで完結できるWeChatミニプログラムを導線に組み込む方法もあります。
さらに、売上目標やKPIを設定します。たとえば、公開後1年で海外売上300万円、海外会員登録500件、問い合わせ30件、海外注文150件など、補助事業後の成果を数字で示すと、事業計画として評価されやすくなります。
まとめ
2026年時点で、越境ECサイト構築に使える補助金はあります。ただし、2021年ごろのように「ECサイト制作費に使える補助金」を単純に探すだけでは不十分です。
国の補助金では、小規模事業者持続化補助金、デジタル化・AI導入補助金2026、中小企業新事業進出補助金、ものづくり補助金などが候補になりますが、それぞれ対象経費や目的が異なります。特に小規模事業者持続化補助金では、ウェブサイト関連費のみの申請ができず、上限も30万円である点に注意が必要です。
一方で、地方自治体の海外販路開拓支援では、越境ECサイト構築、海外ECモール出店、多言語化、海外向け広告、海外向けコンテンツ制作などを直接対象にしている制度も確認できます。特に仙台市、川崎市、新潟県、金沢市、兵庫県、鳥取県、北九州市、沖縄県などは、越境ECとの相性が高い制度が見つかりました。
補助金を活用して越境ECを始める場合は、対象国、商品、販売導線、集客施策、物流、決済、運用体制、売上目標まで含めて、単なるサイト制作ではなく「海外販路開拓の事業計画」として設計することが重要です。
株式会社マルウェブでは、越境ECサイト構築、Magento / Adobe Commerceを活用したEC開発、中国向けSNS・WeChatミニプログラム・小紅書・Weiboなどを活用した海外向け集客支援まで対応しています。越境ECの立ち上げや補助金活用を検討している場合は、サイト構築だけでなく、申請前の事業計画整理、見積作成、海外向け販売導線の設計まで含めて早めに準備することをおすすめします。
越境 EC サイトの構築基盤として Magento / Adobe Commerce を検討する場合は、Magento構築・リニューアル支援のページもご確認ください。
よくある質問
越境ECサイトの構築費用に使える補助金にはどんな種類がありますか?
2026年時点では、国の制度として小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)、デジタル化・AI導入補助金2026、中小企業新事業進出補助金(統合制度へ移行見込み)、ものづくり補助金グローバル枠(同)が候補です。加えて、仙台市・川崎市・新潟県・金沢市・兵庫県・鳥取県・北九州市・沖縄県など、自治体の海外販路開拓支援は越境ECサイト構築や海外モール出店を直接対象にしているものが多くあります。
小規模事業者持続化補助金でECサイト構築費用は補助対象になりますか?
ECサイトの構築・更新費用は「ウェブサイト関連費」として補助対象になり得ます。ただし2026年の第20回公募では、ウェブサイト関連費のみでの申請は不可で、同費目の補助金交付申請額の上限は30万円(税込)です。通常枠全体の補助上限は50万円、補助率は原則2/3で、販路開拓計画全体の一部として組み込む必要があります。
補助金はいつ受け取れますか?交付決定前に発注してもいいですか?
補助金の多くは精算払い(後払い)で、事業者がいったん自己負担で支払い、事業完了後の実績報告と審査を経て支払われます。また、交付決定前に契約・発注・支払いをした費用は対象外になることが多いため、要件定義、見積取得、申請、採択、交付決定、制作開始という順番を守ることが重要です。
弊社ではMagentoを利用した多機能ECサイトの構築・越境EC/中国越境ECの開発をして企業様をサポートしています。 ご興味ある方は是非問い合わせください。
